糖鎖特性解析プロジェクト
● 權 垠相1)、門馬洋行1)、吉田慎一朗1)、坂本 泉1,2)、上松 亮平2) ※ 1)東北大学、2)株式会社アクロスケール
精密機器分析を用いた糖鎖・糖鎖誘導体・糖タンパク質の特性構造解析、また分析法の開発を行い、新規バイオ機能材料への応用評価を行う。
超高齢化を迎える現代社会において、医療費の膨張は解決すべき課題である。事前に病気の兆しを検知することができれば医療費を抑えることも可能である。この兆しの検知に糖鎖・糖タンパク質(図1) といったバイオ医薬と呼ばれる高分子化合物に注目し、精密に定性・定量する方法を確立することで、生体情報の状況が迅速に得られると期待される。
本研究プロジェクトでは、糖鎖・糖タンパク質製剤の特性解析・品質管理を通じ、疾病の危険因子を迅速に検知する分析法の確立を目指す。具体的には、対象疾患の危険因子(糖鎖)を迅速に高感度で検知するために、疾患で生じる糖鎖ライブラリーを構築し、これらを利用して分析法の確立を行う。また、分析データを蓄積しデータベースを作成する。糖タンパク質においては疾患の要因となる高次構造に関して、理学研究科巨大分子解析研究センターにある最先端機器(図2)を利用して、構造解析技術を開発し、糖鎖とタンパク質の関係性データベースを作成する。将来はこれらデータベースを疾病危険因子として、迅速検知できるシステム作りにつなげる。
このように、株式会社アクロスケール(図3) が独自に研究開発を行っている糖鎖・糖鎖誘導体および糖タンパク質に東北大学の先端分析技術を融合させ、その分析手法の開発と特性解析を実施する。これにより、これらの化合物の構造と特性との関係を明確にし、バイオ機能材料への応用について評価検討する。
疾病の危険因子を迅速に検知する分析法の確立と応用開発を目指す本プロジェクトは、その分析結果から得られたデータを蓄積し、対象疾病の危険因子の定義を系統立てて解析できるようになる。これにより将来、病気への不安を和らげ、個人毎の健康状態を把握できる指標定義に役に立つ技術を確立できると考える。さらに、本共同研究の実施を通じて、単一構造を有する糖鎖化学における学術的融合研究の活性化を図るとともに、本研究は東北大学発となるイノベーション創出につながると考える。
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